FlowerLoungeさんへ

マッシュアップに関しては、書くべきことは書いたと思っていたのだけど、それらの拙文(コレコレ)に対して、FlowerLoungeさんからトラックバックを使って反論をいただきました。なので、直接FlowerLoungeさんへの反論という形で以下に雑文を展開します。】

 ご意見ありがとうございます。

 まず最初に、「僕には『マッシュ・アップやサンプリングはクリエイティブではない』という趣旨に読めました」とありますが、これは、こちらの文章が下手だったということだと思います。

 あそこでは、マッシュアップにクリエティビティやオリジナリティがあるか否かを問題にしてる訳ではなく、単純にマッシュアップエクスプロイテーションだと言いたかっただけですから。当然、マッシュアップにも出来、不出来があって、多くの人から受け入れられるものと、誰からも相手にしてもらえないものがあり、その差違はクリエティビティやオリジナリティが理由となる場合もあるでしょう。逆に言えば、エクスプロイテーションだからという理由で、そこにクリエティビティやオリジナリティが存在しないと言ったつもりはないです。このあたりのニュアンスを上手に表現できていないのは、プロのライターでないとはいえ、公開された場所へ文を書く身として反省することしきりです。

 さて、FlowerLoungeさんのblogには一通り目を通させていただきましたが、基本的には著作者人格権等を認めないラディカルなアンチ・コピーライト主義を理想としていらっしゃるようなので、ここで議論を続けても相互が納得できる落とし所があるとは思えません。

 しかし、「プライドのねぇクズ野郎のマッシュやサンプリングはサイアクだと思います。そういう作品(と呼ぶのも汚らわしい)を指して、『エクスプロイテーション』だと呼ぶのならまったく同感です」という件で、この「プライドのねぇクズ野郎」という判断は誰がするのでしょうか?

 おそらく受け手側ですよね? しかし、FlowerLoungeさんが「クズ野郎」と感じていても、他の誰かは素晴らしいと思っているかもしれないし、そのまったく逆の場合もあり得ます。つまり、感じ方や考え方なんて人それぞれで、それは著作権に対しても同じです。

 オレ個人としては、プロ・コピーライト主義にも、極端なクリエイティブ・コモンズ万能主義にも違和感を覚えるといった立場です。したがって、現実的には今のルールを暫定的に認めた上で、より多くの人が納得できる形に改善すべく議論していくしか方法はないと考えています。FlowerLoungeさんにはFlowerLoungeさんのやり方があるでしょうし、自分が10代の頃を思い出せば、そういうラディカリズムも理解できなくはないのですが…。

 最後にちょっとだけ脱線しますが、商業音楽の歴史を顧みれば、70年代前後のロックをとりあげるだけでも、名曲と言われているような作品の多くが、実は黒人ブルースのエクスプロイテーションだったりします。この行為が100%黒人ミュージシャンを搾取しただけかと言えば、そんなことはなくて、逆に何人かのブルースマンは世間から音楽家としてようやく正当に認めてもらえる機会を得たりと、まぁ悪いことばかりじゃなかったようです。何が良くて何が悪いかというのは、その時代や状況、立場等によって異なってくる訳で、「グレー」であることを潔しとしないのも、つまらないかなとは感じてます。